バストに触れていないのに「上がっている」。私が施術中に囁いていた言葉

ベッドに仰向けになった生徒さんに、まず右側だけ施術しました。
そのあと、ご自身の手で左右を確認してもらうと、返ってきたのは、
「上がっている」
という言葉でした。
でも、私が触れていたのはバストではありません。
鎖骨の下にある「中府(ちゅうふ)」というツボの周辺です。
しかも、そこに強い力を加えたわけでもありません。
では、いったい何をしていたのか。
実はそのとき、私はある組織の名前を小さな声で囁いていました。
「クーパー靱帯」
美容に携わる方なら、一度は耳にしたことがある名前ではないでしょうか。
バストには触れず、クーパー靱帯を思い描く
クーパー靱帯は、乳房を支える線維性の結合組織です。
一本の紐でバストを吊り上げているように説明されることもありますが、実際には乳房内部に広がる、もっと複雑な支持構造の一部です。

私は施術するとき、このような組織の形や広がりを、頭の中で立体的に思い描きます。
今回もそうでした。
中府の周辺に軽く触れながら、意識を向けていたのはクーパー靱帯。
そして、その名前を実際に小さく囁きながら、独自のマニピュレーションを行いました。
なぜ中府だったのか。
そこは、バストそのものには触れずにアプローチできる、私にとってぎりぎりの位置だからです。
ただし、ここでもう一つ、私の施術について知っていただきたいことがあります。
実は、中府でなくてもよい場合があるのです。
腕のツボでも感じる、あの「キューッ」という感覚
私には、施術中に「キューッと上がってくる」と感じることがあります。
これは、自分自身が感じ取っている独特の施術感覚です。
そして興味深いことに、中府だけではありません。
腕にあるツボからアプローチした場合でも、同じような感覚を捉えることがあります。
ここが、私の身体調整を理解していただくうえで、大切なところです。
単純に近くの筋肉を揉んだり、靱帯を直接引っ張ったりしているのではありません。
実際に触れる位置とは別に、頭の中で対象の組織を立体的に捉え、その名前を囁き、独自のエネルギーに関する考え方を用いながら、非常に弱い刺激で調整を行います。
そして、施術中に自分が感じる反応を確かめています。
もちろん「キューッと上がってくる」という私の感覚だけで、クーパー靱帯そのものが物理的に動いたと証明できるわけではありません。
ただ、私が長年の臨床で大切にしてきたのは、こうした自分自身の手応えです。
生徒さんの「上がっている」という言葉
あの日、右側だけ施術したあと、生徒さんには自分の手で左右の違いを確かめてもらいました。
そして「上がっている」と答えました。
それは生徒さん自身が感じた違いであり、測定機器で高さの変化を確認した結果ではありません。
けれども、この体験には私が大切にしていることが表れています。
施術する私自身が感じていること。
施術を受けた方が、自分の身体で確かめて感じたこと。
この二つは同じではありません。
私は自分の感覚だけで判断するのではなく、受け手がどのように感じたのかも大切にしています。
美容施術者の方へ、ひとつ伝えたいこと
美容技術を学ぶとき、私たちはどうしても「どこを押すか」「どう動かすか」という手順に目を向けます。
しかし私は、その前に、施術者が何を意識して身体に触れているのかにも興味を持ってほしいのです。
今回、私の手が触れていたのは中府でした。
頭の中で思い描いていたのはクーパー靱帯。
そして、私には「キューッと上がってくる」という感覚があり、生徒さんは自分の手で左右を比べて「上がっている」と答えました。
これが、あの日に私が経験したことです。
なぜ組織の名前を囁くのか。
離れた場所からでも感じる、あの独特の手応えは何なのか。
そのすべてを、短い文章だけで伝えるのは簡単ではありません。
だからこそ私は、こうした身体調整に興味を持った美容施術者の方に、まず実際の施術を体験していただきたいと考えています。
私が何を意識し、どのような弱い刺激で施術しているのか。
そして、受け手ご自身は何を感じるのか。
そこから、この技術の話を始められたらと思っています。
※本記事は筆者の臨床経験と独自の技術思想を紹介したものです。受け手の感想や施術者の感覚は主観的なものであり、靱帯の物理的変化やバストアップ効果、再現性を医学的に証明するものではありません。
神谷 昌志
カミヤ治療院の院長。「あなたが回復すれば、あなたの周りも元気になる。」をモットーに、心身に悩みを抱える多くの人たちの回復をサポートしている。
整形外科 理学療法室勤務
平成7年 東京医療福祉専門学校卒業「鍼灸・マッサージ師免許」取得
平成18年より 江戸川区西葛西に「カミヤ治療院」2名で開業

