ウエストのくびれを考えていたら、背中にたどり着いた。胸腰筋膜という不思議なファシア

ウエストを細く見せたい。
そう考えたとき、多くの方はお腹や脇腹に目を向けるのではないでしょうか。
私も、その気持ちはよく分かります。
ところが、身体の解剖を調べていくと、ちょっと面白いことに気づきます。
ウエストのくびれを考えているのに、私の意識は背中へ向かっていくのです。
しかも、気になっているのは筋肉ではありません。
腰の後ろ側に大きく広がる、一つの結合組織です。
いったい、どうして背中なのでしょうか。
名前は難しい。でも、形は面白い
その組織は「胸腰筋膜(きょうようきんまく)」といいます。
英語では thoracolumbar fascia。
ファシアという言葉を聞いたことがある方なら、興味を持つかもしれません。
ファシアは、身体のさまざまな組織を包み、支え、つないでいる結合組織を広く指す言葉です。
胸腰筋膜は、その中でも背中から腰にかけて広がる、厚い筋膜性の構造です。

一本の細い靱帯ではありません。
複数の層が重なり、背骨や骨盤、周囲の筋肉とつながっています。
私は、この形が気に入っています。
線ではなく、面。
しかも、平らな一枚の膜というより、奥行きのある立体的な構造です。
解剖図でこの広がりを見ると、お腹だけに向いていた意識が、自然に背中側へ移っていきます。
もちろん、胸腰筋膜がウエストのくびれを直接つくっている、という意味ではありません。
ただ、身体を一部分だけで考えなくなる。
そこに、私が感じる面白さがあります。
私は、施術の前に完成形を思い描く
例えば、お客様が「ウエストをすっきり見せたい」と希望されたとします。
私は、まず目指す姿を思い描きます。
横から見たときのラインでしょうか。
正面から見たときのくびれでしょうか。
あるいは、洋服を着たときの印象でしょうか。
そのゴールを決めてから、身体へのアプローチを考えます。
そこで今回、私が着眼点の一つとして考えているのが胸腰筋膜です。
頭の中で、腰の後ろから左右に広がるファシアを立体的に描いてみる。
そして、その広い組織を意識しながらマニピュレーションを行うとしたら、何が変わるのだろう。
そんな発想です。
私は普段の施術で、組織の名前を小さく囁いたり、独自のエネルギーに関する考え方を取り入れたりしています。
ただ、ここでは、胸腰筋膜を意識することでウエストが細くなると確認したわけではありません。
私が今、探っている可能性の一つです。
薄い膜に触れるような、あの感覚
私はこれまで、非常に繊細なタッチで身体調整を行ってきました。
そのとき、ときどき不思議な手応えを感じます。
薄い膜に触れているような感覚。
そこに、呼吸するような、ゆっくりしたリズムがあるように感じることもあります。
その感覚を、私は指先で捉えようとしています。
私の施術では、こうした微妙な反応を大切にしています。
強く揉んだほうが必ずよい、という考え方ではありません。
かといって、ただ弱く触れれば同じことができるわけでもありません。
施術者の姿勢。
身体への接触の仕方。
指先に返ってくる感覚。
そして頭の中で思い描く組織の形。
私にとっては、それらが一つにつながっています。
この独特の触診感覚が、実際にはどの組織の動きを反映しているのか。
そこまでは、まだ分かりません。
ですが、名前のつかない感覚を大切にすることも、私の臨床の一部なのです。
背中をすっきりさせた経験から、次の疑問へ
以前、私は背中をすっきり見せる目的で施術したことがあります。
施術後、お客様にご自身の手で触れてもらうと、
「すっきりした」
「スリムになったように感じる」
といった感想をいただくことがあります。
私は、こうした経験から筋膜やファシアに着眼した施術に可能性を感じています。
もちろん、それは背中の施術での経験です。
胸腰筋膜を意識したことで、実際にウエストがくびれたという証明ではありません。
でも、私には次の疑問が生まれます。
背中のファシアを意識するという発想を、今度はウエストの美容に応用できないだろうか。
私の中では、こうして新しい施術のアイデアが生まれることがあります。
最初からすべての答えが分かっているわけではありません。
実際に試して、触れて、受けた方の感想を聞きながら、考えを深めていくのです。
くびれは、数字だけでは測れない
例えば、ウエストの施術をしたあと。
ご本人が鏡を見て、「なんだかすっきりした」と感じたとします。
それは大切な感想です。
でも、ウエストが何センチ細くなったかという話とは別です。
姿勢が違えば、くびれの見え方も変わるでしょう。
立ち方や身体の向きによっても、ラインの印象は違ってきます。
だから私は、美容の施術では、実際に何を確かめたいのかを考えます。
サイズなのか。
見た目のラインなのか。
それとも、ご本人が手で触れて感じる違いなのか。
それぞれを分けて見ていくと、施術のどこに可能性があるのか、少しずつ分かってくるかもしれません。
もし、いつもの手技に別のイメージを加えたら
エステティシャンの方は、すでにウエストやお腹の施術方法をいくつも持っていると思います。
私は、それを全部変えてほしいとは考えていません。
むしろ、今までの手技に、身体の奥行きを意識するという発想を加えてみる。
ウエストをすっきり見せたいという目的を持ちながら、腰の後ろに広がる胸腰筋膜を思い描く。
すると、施術者自身の身体の見方は、少し変わるかもしれません。
今回の話は、まだ完成された美容技術の紹介ではありません。
ですが、私には面白いと思えるところがあります。
ウエストのくびれを考える。
普通なら、お腹を見る。
ところが解剖図の中をたどっていくと、背中の大きなファシアに行き着く。
そして、これまでの臨床で感じてきた繊細な手応えと、新しい美容の目的が結びついていく。
くびれを考えていたはずなのに、気がつけば背中を見ていた。
身体の解剖を知ることには、そんな面白さもあるのです。
※本記事は筆者の施術経験と美容技術への着想を紹介しています。胸腰筋膜への直接的な作用、ウエストのサイズ減少、くびれ形成の効果を確認したものではありません。
神谷 昌志
カミヤ治療院の院長。「あなたが回復すれば、あなたの周りも元気になる。」をモットーに、心身に悩みを抱える多くの人たちの回復をサポートしている。
整形外科 理学療法室勤務
平成7年 東京医療福祉専門学校卒業「鍼灸・マッサージ師免許」取得
平成18年より 江戸川区西葛西に「カミヤ治療院」2名で開業

