眉間のシワ、ほぐしてもすぐ戻るのはなぜ?

表情のクセと、顔の奥にある小さな靱帯の話
「怒っているわけじゃないのに、怒っているように見られるんです」
眉間の縦ジワを気にする女性から、こんな相談を受けることがあります。
鏡を見れば、いつの間にか眉間にシワが寄っている。
仕事中も、考え事をしているときも、気がつくと眉をぎゅっと寄せている。
本人はまったく意識していないのです。
フェイシャルの施術では、眉間の筋肉を優しくほぐしたり、皮膚を伸ばしたりすることがあります。
でも、施術後は穏やかな表情になっても、しばらくすると、また同じ場所にシワが寄ってしまう。
なぜなのでしょうか。
私は、こうした眉間の悩みを考えるとき、シワそのものだけでなく、その人の身体の緊張にも目を向けています。
考え事が多い人ほど、眉間に力が入りやすい?
例えば、仕事のこと、家族のこと、将来のこと。
いつも何かを考えている人がいます。
真剣に考え込んだり、心配事が続いたりすると、知らず知らずのうちに顔にも力が入ることがあります。
眉を寄せる。目を細める。奥歯を噛みしめる。
こうした小さな緊張を、一日のうちに何度も繰り返しているかもしれません。
もちろん、考え事の多い人すべてに眉間のシワができるわけではありません。
年齢による皮膚の変化や、日頃の表情のクセも関係します。
ただ、精神的に緊張しているときと、リラックスしているときでは、顔の表情が違うことは、誰でも経験があると思います。
実際、私は身体の緊張が強い方を施術するとき、気になる部分だけでなく、自律神経の働きや全身の状態にも目を向けています。
眉間のシワだけを追いかけるのではなく、なぜその人がいつも力を入れてしまうのか。
そこにも、施術者として興味を持ちたいのです。
眉間の奥には、何があるのでしょうか
ここで少しだけ、解剖学の話をします。
眉間の下、鼻の付け根には、おでこの骨と鼻の骨がつながる場所があります。
「前頭鼻骨縫合(ぜんとうびこつほうごう)」という部分です。
そして、そのすぐ左右、目頭の奥には、まぶたを骨に支えている「内側眼瞼靱帯(ないそくがんけんじんたい)」があります。

難しい名前ですが、二つだけ覚えていただければ十分です。
鼻の付け根にある骨のつなぎ目と、目頭を支える小さな靱帯。
それだけでも、顔の中心には、普段あまり意識しない構造があることが分かります。
私は長年、筋肉を強く揉むのではなく、こうした身体の奥にある靱帯や膜などの結合組織にも着目してきました。
ただし、これらの組織が眉間のシワの直接的な原因だというわけではありません。
私にとって大切なのは、身体を表面だけでなく、立体的に見てみるということです。
ほとんど力を使わない施術という発想
私の施術では、強い力で押したり、無理に引っ張ったりすることを中心にしていません。
解剖学的な構造を頭の中で思い描き、非常に弱い接触で身体の反応を観察します。
意識を向ける組織の名前を、小さな声で囁くこともあります。
例えば、今回取り上げた鼻の付け根や目頭周辺の支持構造。
こうした場所も、立体的に身体を考えるための着眼点になります。
ただ、どの組織に意識を向けるかは、実際の状態や施術経験をもとに考える必要があります。
名前を唱えれば靱帯が緩んだり、シワが消えたりするということが医学的に証明されているわけではありません。
それでも、強く押すことをやめ、指先の感覚や身体の反応に注意を向けるという方法には、私自身、長年取り組んできました。
目の周囲はデリケートですから、安全な接触範囲を守ることも欠かせません。
眉間だけでなく、身体全体が緊張していたら?
ここが、私がもう一つ大切にしているところです。
眉間のシワを気にしている方でも、実際に身体に触れてみると、首や肩など、別の場所にも緊張が見られることがあります。
いつも何かに追われているような感覚。
休んでいるつもりでも、なかなか力が抜けない。
そんな状態なら、眉間だけを一生懸命ほぐしても、また同じような表情に戻ってしまうことがあるかもしれません。
そこで私は、局所だけでなく、身体全体の緊張や自律神経に関係する状態にも配慮しながら施術を考えます。
もちろん、自律神経を整えれば眉間のシワが消える、という単純な話ではありません。
ただ、表情と心身の緊張は、切り離して考えられない部分もあります。
美容施術者にとっても、こうした視点を持つことは、お客様をより深く理解するきっかけになるのではないでしょうか。
シワを消すことより、表情を見てみる
眉間にシワがあると、ついその一本を何とかしようと考えてしまいます。
けれど、お客様が本当に望んでいるのは、単にシワが一本減ることだけでしょうか。
「疲れて見られたくない」
「いつも穏やかな顔でいたい」
「もっと自然な表情になりたい」
そんな気持ちがあるのかもしれません。
だから私は、シワのある場所だけでなく、その人の表情や身体全体にも目を向けたいと思っています。
強く揉まなくても、身体を観察する方法はあります。
顔の表面だけでなく、その奥の構造を思い描くこともできます。
そして何より、なぜその人の眉間にいつも力が入ってしまうのか、考えてみることができます。
シワを見つけることと、その人を見ることは、少し違うのかもしれません。
眉間という小さな場所から、身体全体へ。
そんなふうに施術の視点を広げてみるのも、面白いのではないでしょうか。
※本記事は、筆者の施術思想と身体観察の視点を紹介するものです。特定の靱帯への接触や囁き、自律神経を意識した施術によるシワ改善効果を保証するものではありません。
神谷 昌志
カミヤ治療院の院長。「あなたが回復すれば、あなたの周りも元気になる。」をモットーに、心身に悩みを抱える多くの人たちの回復をサポートしている。
整形外科 理学療法室勤務
平成7年 東京医療福祉専門学校卒業「鍼灸・マッサージ師免許」取得
平成18年より 江戸川区西葛西に「カミヤ治療院」2名で開業

