下腹だけぽっこり。お腹を揉む前に、見てほしい場所があります

生成り色のトップスとパンツを着た女性が、下腹部から腰付近へ手を添えて立っている。

同じ手技でも、身体の見方が変われば施術は変わる?

「体重は落ちたのに、下腹だけが引っ込まないんです」

こんなお悩みを聞いたことはありませんか。

ウエストにはくびれがあるのに、おへその下だけがぽっこり出ている。

洋服を着ると、どうしてもお腹の下の方が気になる。

私の施術院にも、こうしたお腹の悩みを持つ方が来られます。

美容サロンなら、お腹を温めたり、優しく揉んだり、さまざまな方法でケアをすると思います。

でも、ちょっと考えてみてください。

下腹が出ているから、その部分を一生懸命揉む。

確かに、分かりやすい方法です。

では、同じようにお腹に触れながら、頭の中でまったく違うことを考えていたらどうでしょうか。

実は、ここに私が長年取り組んできた施術の、ちょっと変わった発想があります。

お腹を見ているつもりで、何を見ているのか

例えば、お客様が仰向けになっているとき。

それほど下腹が目立たなかったのに、立ち上がって鏡を見ると、ぽっこりして見えることがあります。

身体の向きが変われば、重力のかかり方も、姿勢を保つための働きも変わります。

また、下腹が出て見える理由は、人によって違います。

脂肪のつき方かもしれません。

お腹の張りかもしれません。

骨盤の傾きや姿勢も、見た目に関係する場合があります。

だから、私はお腹だけでなく、骨盤やその周りのつながりにも目を向けたいと思っています。

そこで、少しだけ解剖学の話をさせてください。

難しく考えなくても大丈夫です。

覚えていただきたいのは、たった二つのラインです。

お腹には、見えない「縦の線」と「V字の線」がある

まず、お腹の真ん中に一本の縦線を思い浮かべてください。

みぞおちの下から、おへそを通り、さらにその下へ伸びていく線です。

これは皮膚に描かれた線ではありません。

お腹の奥で、左右から集まった丈夫な腱の膜が合わさっている部分です。

解剖学では「白線(はくせん)」と呼びます。

洋服でいえば、左右の布をつないでいる中央の縫い目のようなものです。

では、もう一つのラインはどこにあるのでしょうか。

今度は、下着の前側を思い浮かべてみてください。

おへそのずっと下、左右の脚の付け根に沿って、斜めに伸びるV字のようなラインがありますね。

そのラインの奥には、左右それぞれ、脚の付け根に沿って外側から下腹の中央へ向かう、丈夫な帯状の組織があります。

これが「鼠径靱帯(そけいじんたい)」です。

左右に一本ずつあり、お腹と太ももの境目に近い場所を走っています。

白線と鼠径靱帯の位置関係を示す解剖イメージ・模式図
記事理解のための解剖イメージ・模式図です。美容効果や作用を示すものではありません。

つまり、白線はお腹の真ん中を縦に走るライン。

鼠径靱帯は、その下の左右にある、V字に似た斜めのラインです。

この二つの位置関係が分かると、お腹はただの柔らかい部分ではなく、骨盤につながった立体的な構造なのだとイメージしやすくなると思います。

もちろん、この二つが下腹のぽっこりを直接作っているという意味ではありません。

私が注目したいのは、普段何となく触れているお腹の奥にも、こうした構造があるということなのです。

手技を変えなくても、頭の中は変えられる

ここからが、私の施術で特に大切にしているところです。

私は筋肉を強く揉みほぐすのではなく、靱帯や腱、筋膜といった結合組織を意識しながら、ごく弱い接触で施術を行っています。

そのとき、解剖図をただ思い出すのではありません。

身体の中で、その組織がどこからどこへ伸びているのか。

どのような厚みや形をしているのか。

周囲の骨と、どうつながっているのか。

できるだけ立体的に思い描きます。

私はこうしたイメージの使い方を、とても大切にしています。

自分では「右脳を使うような感覚」と表現することもあります。

ただし、医学的に右脳だけが特別に働いていると確認したわけではありません。あくまで私自身の感覚を表した言葉です。

面白いのは、必ずしも手技そのものを大きく変える必要はないということです。

同じ場所に手を添えていても、頭の中で何を描き、何を感じ取ろうとしているかによって、施術中の注意の向け方は変わります。

私は、その違いが実際の施術でも大切だと感じています。

なぜ、そんなに弱く触れるのか

ここで、一つ疑問が出てくるかもしれません。

「そんなに弱い力で触って、何が分かるんですか?」

もっともな疑問だと思います。

私は長年の施術の中で、強い力を加えると、指先で感じ取れるごく小さな動きが分かりにくくなることがあると感じてきました。

そのため、必要以上に押さえ込まないようにしています。

軽く手を添え、余分な力を抜く。

そして、指先に伝わってくる小さなリズムや動きに注意を向けます。

呼吸に伴う動きなのか。

拍動などの影響なのか。

あるいは、触れている私自身の手の動きも関係しているのか。

そのすべてを明確に区別できているわけではありません。

ただ、非常に弱い接触の中で、ある瞬間に「あ、今までと感触が違う」と感じることがあります。

その変化を、私は大切な観察材料としてきました。

強く押して形を変えようとするのではなく、わずかな感触の違いを感じ取ろうとする。

そこには、一般的な揉みほぐしとは違う技術上の難しさと面白さがあると思っています。

「あ、この感覚なのか」と分かる瞬間

こうした話を文章で読むと、少し不思議に感じるかもしれません。

「解剖をイメージするって、どういうこと?」

「ごく弱く触れるだけで、何を感じるの?」

きっと、そう思われるでしょう。

私も、この感覚を文章だけで正確にお伝えするのは難しいと感じています。

だからこそ、今後、少人数の体験会やセミナーなどで、実際の接触の感覚を確かめていただく機会を作りたいと考えています。

大切なのは、難しい解剖学用語をたくさん暗記することではありません。

まず、身体の構造を立体的に思い描いてみる。

次に、力を抜いて触れてみる。

そして、自分の指先が何を感じているのか、注意を向けてみる。

その中で「あ、この感覚なのか」と気づくことができたら、いつもの施術を見直すきっかけになるのではないでしょうか。

もちろん、一度体験すれば誰でも同じ結果が出せるということではありません。

それでも、施術者の手の使い方や観察の幅を広げる学びには、十分価値があると思っています。

下腹を変えたい。その前に、施術者自身の感覚を変えてみる

ぽっこりした下腹を見ると、どうしてもそこを何とかしたくなります。

もっと揉もうか。

もっと流そうか。

もう少し強く押してみようか。

でも、そこで一度、手の力を抜いてみる。

お腹の真ん中を走る白線。

下着のVラインに近い位置を、左右斜めに伸びる鼠径靱帯。

その周りに広がる、見えない結合組織。

そんな構造を頭の中に描きながら、身体を観察してみるのです。

実際の施術では、鼠径部や恥骨付近に直接触れることが必要とは限りません。デリケートな場所ですから、安全性やお客様の同意にも十分な配慮が必要です。

私が本当に伝えたいのは、下腹を引っ込めるための特別な一点を見つけることではありません。

今までと同じ手技でも、施術者が身体をどうイメージし、指先で何を感じようとしているかによって、施術の質を見直せるのではないか。

そういうことです。

身体の中にある見えない構造を、頭の中で描く。

必要以上の力を使わず、ごく小さな感触に気づく。

そして、その感覚と実際の変化を丁寧に確かめる。

私は長年、そんな施術を追いかけてきました。

ぽっこり下腹という身近な悩みも、実は、施術者自身の「身体を見る目」と「手の感覚」を考え直す、面白い入口になるのかもしれません。

※本記事は筆者の施術経験と独自の身体観察法を紹介するものです。立体イメージや微細な接触によって特定の結合組織が変化すること、下腹部が引き締まることなどの効果は医学的に確認されたものではありません。急な腹部膨満、痛みやしこりを伴う場合などは医療機関での確認が必要です。

神谷 昌志

神谷 昌志

カミヤ治療院の院長。「あなたが回復すれば、あなたの周りも元気になる。」をモットーに、心身に悩みを抱える多くの人たちの回復をサポートしている。

【経歴】
整形外科 理学療法室勤務
平成7年 東京医療福祉専門学校卒業「鍼灸・マッサージ師免許」取得
平成18年より 江戸川区西葛西に「カミヤ治療院」2名で開業

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