口角ケアで気になる「SMAS(スマス)」とは? 私が試した顔のつながり

口角を上げたいと思ったとき、口角だけを見ていてよいのだろうか。
私がそんなことを考えながら調べていたとき、出会ったのが「SMAS(スマス)」という言葉でした。
最初は何のことか分かりませんでした。けれど、知ってみると、私にはとても面白い名前だったのです。
なぜなら、口元を一点だけで考えるのではなく、頬や顔のつながりを見直すきっかけになったからです。
口角だけで、顔の印象は決まらない
口角が気になると、どうしても口の端に注目しがちです。
でも、鏡の前で表情を変えるだけでも分かるように、同じ人の口元の印象は一つではありません。笑っているとき、力を抜いているとき。頬や周囲との関係によっても、見え方は違います。
私はこれまで、身体の一部が気になるからといって、その場所だけにとらわれない施術の考え方を大切にしてきました。
口元でも同じ疑問が湧きました。
「口角という一点の外側には、どんなつながりがあるのだろう」
そこで知ったのが、顔の浅い層にある結合組織のまとまりを考えるうえで重要なSMASでした。
「スマス」は、顔を引き上げる魔法の一枚布ではない
SMASは、浅筋腱膜系(せんきんけんまくけい)と呼ばれる構造です。
顔の皮膚の下には、表情に関わる筋肉や結合組織などが重なり、部位ごとに複雑なつながりがあります。SMASも、顔全体に同じ厚みの布が一枚かぶさっているような単純なものではありません。
だから「ここを触れば口角が上がる」と、一か所に原因や作用を決めつけることはできません。
それでも私にとっては、口角から頬へ、そして顔の周囲へと、考える範囲が広がるきっかけになりました。
解剖の勉強が面白いのは、知らなかった名前が増えるからではなく、今まで見ていた身体が違った問いを投げかけてくるからだと思います。
知っただけでは終わらない。私は自分で試してみた
私の施術では、筋肉を強く揉みほぐすことを中心にはしていません。
靱帯や腱、筋膜などの形や広がりを頭の中で立体的に思い描き、名称を小さく囁くことがあります。独自のエネルギーについての考え方と、ごく弱いマニピュレーションも、私が長年向き合ってきた技術の一部です。
SMASを知ったときも、次に気になったのは「これを意識して自分の方法を試すと、私は何を感じるだろう」ということでした。
実際に試してみると、私自身には、口元が少し上がるような感覚がありました。
ここは慎重に区別しておきたいところです。
私がそう感じたことと、口角の位置が客観的に変わったことは同じではありません。まして、SMASそのものへ直接作用したと確認できたわけではないのです。
ただ、この体感は、口元の見方を考え直す私自身の手がかりになりました。
美容施術で伝えたいのは、結果の約束より「観察の視点」
美容施術者の皆さんは、お客様から「口角を上げたい」「疲れて見える口元が気になる」といった希望を聞くこともあるでしょう。
そんなとき、口角の位置だけを追うのではなく、無表情のときの印象と笑ったときの印象、頬とのつながりなど、何を確かめたいかを整理する見方もあります。
それは、すぐに新しい手順を増やすという意味ではありません。今持っている技術を使いながら、身体を見る角度を増やすことです。
私自身、「スマス」という名前に出会ってから、口元について確かめたいことが増えました。
「ここを触れば必ず上がる」と言い切るより、「なぜこの場所だけを見ていたのだろう」と問い直す。
美容施術を学び続ける面白さは、こんな小さな発見の中にもあると感じています。
※「口元が少し上がるような感覚」は筆者自身の主観的な体感です。SMASへの直接作用、客観的な口角挙上、美容効果や他者による再現性が実証されたことを示すものではありません。
神谷 昌志
カミヤ治療院の院長。「あなたが回復すれば、あなたの周りも元気になる。」をモットーに、心身に悩みを抱える多くの人たちの回復をサポートしている。
整形外科 理学療法室勤務
平成7年 東京医療福祉専門学校卒業「鍼灸・マッサージ師免許」取得
平成18年より 江戸川区西葛西に「カミヤ治療院」2名で開業
